環境科学とは {環境・科学・公害}

1960年代に入って公害が急速に広がり、人々の生活のうえに深刻な影を落とした。

その結果、緊急になんらかの解決方法をみいださねばならないという社会的要請が強まり、そのなかから環境科学の萌芽(ほうが)が形成された。

その動きは欧米における環境問題への学問的な取り組みと合流し、地球全域の環境を守れという主張に発展した。

このようにして、「環境」ということばが人々をとらえ、公害問題を中心とした多様な環境問題を科学的に究明しようとする公然とした流れへと進んだ。

以上の経過からも明らかなように、応用科学の一分野としての環境科学には、現実対応への優れた能力が求められている。

環境科学が担わねばならない第一の主要課題は、切迫した問題である公害の解決と、その防止機能の向上にかかわるものである。

そのためには、研究の推進および研究成果の適用を阻んでいる社会的条件の排除が不可欠である。

たとえば「水俣病(みなまたびょう)公害」の問題はその典型を示している。

工場排水中に含まれる原因物質の追究、生産工程についての原因究明、環境汚染の実態把握、被害状況・健康破壊の調査、汚染水域浄化の研究など、すべての分野に「資本主義体制の壁」が大きく立ちはだかっている。

この事実は、環境科学と社会科学との接触を不可避にする。

公害発生の社会的原因の究明、公害対策の実施などの面にも社会科学からのアプローチが必要とされる。

第二の主要課題は、環境保全、さらには環境改善を実現しつつ、生産の発展を実現しうる方向の追究である。

農林業の分野にはこの課題についての成果が豊富にみられる。

他方、公害原因物質となっている化学物質を生産する分野では、生産に伴って生じる廃棄物などを有害な状態で環境内に排出させない方法の探究が行われなければならない。

化学物質を日常生活のなかで使用する場合についても同様の課題が存在する。

現時点で問題がないとされている排出状態も含めて、広く現行の生産・開発活動が長期間継続する場合の将来の状態を予測する研究が重要である。

これらの研究にとって、地球全域にわたる恒常的な観察・測定体制を確立することはきわめて急がれる課題である。

しかし、第一の課題の追究が不十分な現状にあって、第二の課題への関心は希薄にならざるをえない実状にある。
update:2009年08月23日